京大きらら同好会

京都大学きらら同好会(3代目)のブログです。

【「つむつき」完結記念リレーエッセイ】最終ブログ―会員の「つむつき」への思い―

 会長のじゃすみんです。

 本記事が「つむつき」リレーブログの最終記事となりますが、本記事では各会員に「つむつき」に対する思いを自由に語ってもらう形にしました。以下、会員のメッセージになります。

 

まっつごー

 副会長のまっつごーといいます。紡と唯月、そして当会と「つむつき」の運命的な出会いに思いを馳せると、完結はこれまでの日常の終焉を思わせるものかもしれません。しかし彼女たちの日常も当会の「つむつき」推しもこれからずっと続いていくものだと僕は信じています。ちうね先生、連載お疲れさまでした。

 

たけらぎ

 たけらぎと申します。京大きら同では、NFで開催したつむつきクイズの一部を作問しました。
 100年前の東京ー関東大震災による日常の崩壊ーが想起される中で描かれる日常を読んでいると、ほのかに13年前の震災を思い出し、華やかでありつつも寂しさも感じました。このような、他のきらら作品には無い魅力があるつむつきが完結するのはとても惜しいですが、作品が終わってもきら同や他の活動を通じてつむつきを広げていきたいと思います。ちうね先生、お疲れ様でした。

 

熊野寮きららPT

 熊野寮きららPTです。ちうね先生が熊野寮にお越しになって以降、寮一熱い漫画となった『紡ぐ乙女と大正の月』を今後も新入生に布教し、寮が滅びるまで紡いでいこうと思います。連載お疲れ様でした。入寮お待ちしております!

 

湖柳小凪

 他の人の記事の「つむつきは紡が100年前にタイムスリップするお話」というのを読んだ時、つむつきは2019年の作品というイメージが強かったので数年分盛ってるなぁと思った小凪です。そう思ったのですが、気づいたら紡がタイムトラベルした時代は今(2024年)から100年以上前になってしまいましたね。時が過ぎるのは早い。
 ここですごくどうでもいい告白をしますが、今回のリレーエッセイで2/10もあった旭の記事を執筆した一人でありながら、私の推しは旭ではなく雪佳ちゃんです!!!!!
 そんな雪佳ちゃんに振り回される紡を、タイムリミットがありながらも恋人として同じ時を丁寧に重ねていく紡と唯月の恋路を、夜雨さんを、魅力的なキャラクター達の織りなす時に微笑ましく時に心が揺さぶれるほど切ない大正時代の『日常』を、本当はもっともっと見守りたかった。もっともっと紡達に会いたかった。でも、物語の登場人物にはいつかは結末を添えてあげるものですからね。
 完結は本当に寂しいですが、心してちうね先生が紡達にあげた「結末」を見届けさせていただきます。ちうね先生、改めてこのような魅力的なキャラクター・そして彼女らの織りなす心揺さぶられる『日常』『百合』を描き切ってくださってありがとうございました! 5年間、本当にお疲れさまでした。(そしてまたどこかしらで雪佳ちゃんと雪佳ちゃんに振り回される紡に会えることをほんの少し期待してます)

 

小汚いエアコンの生け捕り

 京大きら同2023年度会計のこぎです。今年度の京大きら同では様々な活動を行いましたが、「つむつき」に関する活動は特に盛り上がっていましたし、そのおかげで、京大きら同が注目される、ということもあったように思います。連載終了はとても残念ですが、私達はこれからも「つむつき」を愛し続けるでしょうし、せめてもの恩返しに、その愛を発信し、広げていきたいと考えています。ちうね先生、連載お疲れさまでした。

 

くら鳥

 “つむつきスト”(非公式ファンネーム)1100万人を目指して布教活動をしてきたくら鳥です。
 私が京大きらら同好会に入ったのも、歴史に興味を持って旅行をするようになったのも、大正時代が好きになったのも全て「つむつき」のおかげです。他にも「つむつき」からは数え切れない程の沢山の経験と思い出を貰ったのでいくら感謝しても足りないです。作品はまもなく完結しますが、”つむつきスト1100万人”にはまだ遠いですし、今後とも「つむつき」を色々な形で応援していきたいと思っていますので、みんなで「つむつき」を盛り上げていきましょう!

 

うりあ

 クイズ大会の記事を書かせていただいたうりあです。「つむつき」クイズの作問をする際に改めて原作を熟読したり、ブログを読ませていただいたりする中で、本当に調べれば調べるほど味が出てくる作品だと感じました。特に旭は愛すべき負けヒロイン(褒め言葉)と言いますか、本当に魅力的なキャラで大好きでした。連載終了は残念ですが、私はこれからも「クイズ」という手段を通じて「つむつき」を広げていきたいと思っています。ちうね先生、連載お疲れ様でした!

 

 

 以上になります。ちうね先生を始め、弊同好会の「つむつき」関連企画に携わってくれた皆様、本当にありがとうございます!

 これで弊同好会の「つむつき」リレーブログ、そして「つむつき」の連載も最終回を迎えることになりますが、弊同好会はこれからも「つむつき」を全力で応援していきたいと思います。そして最後に、会長として感謝の言葉を述べさせていただきます。

つむつき、ありがとう!!!

 

【「つむつき」完結記念リレーエッセイ】紡の足跡をたどって

書いた人:まっつごー

 みなさんこんにちは。京大きらら同好会副会長のまっつごーといいます。個人で記事を出すのは初めてでしょうか。

 ある会員の提案から始まったこのリレーブログ企画も早十本目になりました。他の会員の記事を読んで普段の会話ではなかった新しい発見をしたり、界隈に新たな話題を提供したりと、会の活動がまた新たな形で結実したことにとても嬉しく思います。これからもこの企画と当会をよろしくお願いします。

 僕と「つむつき」の出会いは……恥ずかしながら当会を再建した後のことになります。ご存じの通りじゃすみん会長の猛プッシュと「ぷりぷりプリン」のタテカン制作もあり単行本、それから最新号まで一気読みしたのが去年の初夏の頃でしょうか。何というか「つむつき」は……月並みな表現ですがとてもいいですね。丁寧な時代考証に裏付けられた女学生たちの日常と、数々のきっかけから変わっていく紡と唯月の関係。と、愛を語るのはいったんここまでにしましょう。今回のテーマは「聖地巡礼」です。

時間的で空間的なノスタルジア

 「つむつき」の舞台はご存じの通り大正時代の帝都・東京です。大正から令和に至る百年というのは見方によって長かったり短かったりするものですが、町並みや社会構造から感じられる「長さ」とは対照的に、僕には作品の舞台が東京であることからある種の「短さ」を感じられました。

 突然の自分語りになりますが、僕の故郷は東京です。(「おちフル」的な「東京」でもなく、かといって末延邸があるような都心でもありません)そして、僕は京都大学の一回生です。これが何を意味するでしょうか……そう僕は去年の春、東京を後にしました。しかし失ってから大切なものに気付くというのは今回も例外ではなく、大学生になってからというものの故郷でもあり巨大な都市構造でもある東京へ憂愁と憧憬の混じった複雑な想いを抱いていました。

 ここで「つむつき」に思いを馳せてみましょう。「東京」「銀座」「上野」……現代ではおよそ異質な町並みではありつつも、かつてよく耳にし実際に生活の一部でもあった地名の元で彼女たちのドラマが繰り広げられていました。僕がかつて属していた生活圏は、間違いなく彼女たちがその昔日常を過ごしていた土地だったのです。時間的に隔絶されていても懐かしい響きに焦がれる想いは変わりません。ここでは「つむつき」の東京における聖地を個人的な思い出も交えて紹介していきたいと思います。 

銀座~日本橋

 紡がはじめて大正時代に降り立ったのはご存じの通り銀座です。銀座といえば、今では中央通り沿いにビルが建ち並び、そこには最先端のブランドや歴史ある百貨店などが軒を連ね東京を代表するおしゃれ街のイメージでしょうか。江戸時代にはその名の通り銀貨の鋳造を独占的に扱う「銀座」がおかれ、幕末には衰退し明治五年には大火に見舞われるものの、その後イギリス人建築家の設計により再開発が行われ、当時の最先端の店が集まる「ハイカラ」な街へと変貌を遂げました。「つむつき」に登場する銀座は関東大震災でレンガ建築が壊滅する前の街の雰囲気を色濃く残しています。

 また中央通り沿いには北から日本橋~京橋~銀座~新橋……と街区が連続して形成されており、新橋駅から上野駅まで歩けば副都心ではない側の、古くからの東京(江戸)の町並みを丸ごと実感することができます。まずはこのルートで沿道の聖地を巡ってきた様子をお届けします。

第一話より。「は……?」

銀座八丁目。すべてはここから始まった

 紡が大正時代にタイムスリップして目を覚ましたのは銀座八丁目、博品館前です。かつて博品館勧工場(百貨店の前身のようなものです)がありました。銀座八丁目交差点はちょうど銀座の南端にあたり、南側にかつて流れていた汐留川にはかの有名な新橋が架かっていました。ここから少し南に歩くと東海道線の新橋駅(二代目)に辿り着くことができます。

 博品館勧工場はその後廃業し、一時他の店舗として歴史を歩みましたが昭和五十三年に現在のビルで復活、その後は博品館TOY PARKとして営業しています。

 また南側の汐留川は昭和三十四年の東京高速道路の建設に伴い埋め立てられ、その際明治期に掛け替えられた新橋も廃橋となってしまいました。その際撤去された親柱が中央通りの歩道に保存されています。

歴史を感じさせる古めかしい柱ですね

「植えてうれしい銀座の柳 江戸の名残りのうすみどり
吹けよ春風紅傘日傘 けふもくるくる人通り」

資生堂パーラー

 すぐ北の銀座七丁目には資生堂パーラーがあります。深紅のビルが特徴的。こちらは今でもカフェ営業を続けられているそうです。(今回は入りませんでしたが……)

 続いては第一話で紡が見つけた木村家。作中では田村屋となっています。「木村屋」の印象的な看板は文字の形をそのままにして現代風にアレンジされています。僕も紡たちと同じようにあんパンを買ってみることに。小ぶりながら皮のしっかりしたあんパンはあんこの甘さも相まって非常に上品な味わい。味もバリエーション豊かなのがいいですね。あんパン片手に銀ぶら……とても乙な楽しみ方だと思います。

第一話より

銀座木村家。現代風の店構えですが伝統も感じられます

和光本館

一巻扉絵より。かわいい

 こちらは銀座四丁目の角の和光本館。ちょうど銀座線と日比谷線銀座駅が交差する位置で、木村家の南隣にあります。和光の時計塔は震災後昭和七年に建て替えられ、現存しているものは二代目のものです。一巻の扉絵にあるのは明治二十七年に竣工した一代目のもの。(原作のアングルの位置がよくわからなかったので全景の写真に代えさせていただきます)

 またこの写真の奥に映っている山野楽器本店は日本一地価の高い土地として有名です。(公示地価による)なんと一平方メートルあたり5380万円にもなるそうです。

 「つむつき」本編とは何も関係ありませんが、ちょうど銀座の真ん中あたりでお昼頃だったので一度七丁目へ戻り、かの有名なビアホール「ライオン」でお昼をいただきました。ここは昭和九年に竣工した現存する日本最古のビアホール。レンガ調の内装や美しい装飾、大広間に雑然と敷き詰められたテーブルは非常に趣のある様子でした。

ライオンの内装

カツカレーをいただきました

 お腹を満たしたら銀ぶら再開です。突然ですが、僕は銀座に来た時ほぼ必ず三丁目の伊東屋で文房具を物色します。五丁目の鳩居堂が魅せる雰囲気とは対照的にかなり現代的でおしゃれなお店です。銀ぶらとは銀座でしか出会えない店を物色する楽しみであるといえるでしょう。電車で移動していると絶対にわからない街の面的な広がりを感じ取ってください。

 しばらく北へ歩き京橋を越え、東京駅を左手に見送ると日本橋に着きます。個人的には渋谷、新宿といった副都心も魅力的ではありますが、この中央通りの界隈を歩くと整然とした路地に立ち並ぶ小綺麗なビル群や入居している錚々たるブランドに東京を感じます。東京駅周辺では八重洲口の雑居ビル群が再開発され、銀座~京橋とは一変して現代的な趣がありますね。

 日本橋は言わずと知れた日本の道路の出発点です。橋の中央には「日本国道路元標」が埋め込まれており、ここから東海道はじめ五街道が日本各地へ伸びていきます。しかし車道の真ん中にある本物の道路元標を撮るのは至難の業ですから、このように歩道にレプリカが展示されています。

日本国道路元標(レプリカ)

日本橋の親柱。獅子が乗っているのは東京市

 しかし現代の日本橋は、浮世絵で描かれたような……あるいは大正時代のような明るい光景とはほど遠いものとなってしまいました。昭和三十八年、都心の慢性的な交通渋滞を解消するため、また東京オリンピックをにらんだインフラ整備として首都高の都心環状線日本橋川の上空に建設されます。用地買収にかかる期間を短縮するため川や道路の上空、場所によっては川を埋め立てて建設されました。(汐留~銀座~京橋など)

 車線間に突然橋の橋脚が現れたり(首都高より橋の方が古いということです)ビル群を縫った高架などこれはこれでそそる面もありますが、やはり日本橋の今の光景は残念なもの。また道路そのものの老朽化の問題もあります。

 そこで現在日本橋周辺の都心環状線を地下化し2040年(令和二十二年)をめどに高架道路を撤去する計画が進行しています。計画の第一段階として令和四年(2021年)呉服橋、江戸橋出入口が廃止されました。計画通りならばあと二十年もしないうちに日本橋に再び青空が戻って来ます。

架線柱を兼ねた道路元標

 また首都高の高架にはかつて都電の架線を支えていた架線柱と一体になった道路元標もあります。そういえば、紡がはじめて目を覚ました銀座八丁目のシーンでも、現代ではなく大正時代であることを読者へ伝えるシンボルとして市電の車両が描かれていました。

第一話より

第十九話より。市電は市民の生活に密着していました

 東京における路面電車のはしりは明治後期に建設された馬車鉄道が電化されたもので、以降震災や戦災をはさみながらも最盛期には二百キロを超す営業区間を擁しました。しかしモータリゼーションの進展により路面電車が渋滞の原因とされたことや、地下鉄の延伸により採算が悪化したことで昭和四十七年に荒川線の一部区間を残しすべて廃止されてしまいます。

 現代では再評価される向きもある路面電車ですが、東京都下においては道路状況を鑑みると復活は望むべくもないでしょう。ところどころ残される架線柱の跡や都バスの系統、地下鉄の路線にその面影を留めるのみとなっています。

 日本橋北詰まで向かえばついに日本橋三越が見えてきます。第十七話のお買い物シーンはここが舞台です。

第十七話より。昭和初期に改築され現在とは異なります

上野

 日本橋からそのまま中央通りを北上すれば、神田のオフィス街や万世橋駅の遺構、秋葉原の電気街を後目に上野公園へ向かうことができます。今回は少し疲れていたので銀座線で飛ばしてしまいましたが、神田界隈もなかなか魅力的です。言わずと知れたカレー激戦区、味はどこも文句なしだと思います。

 軽井沢回の待ち合わせ場所であった上野公園は江戸時代寛永寺の境内でしたが、上野戦争を経て明治時代に官有地となったのち宮内省から東京市に下賜され、上野恩賜公園として一般に開放されます。

 かの有名な西郷隆盛像は明治三十一年に建立されました。二次大戦中の金属供出も免れいまでも上野に鎮座しています。

第二十四話より。上野公園の南端、京成上野駅の入口近くにあたります

上野公園の南側入口

第二十四話より。金属供出を免れた像は貴重です

西郷隆盛

二代目上野駅。昭和七年(1932年)竣工

第十三話より。初代駅舎は明治十八年(1885年)竣工

第二十四話より。かわいい

第二十四話の元ネタ。建物の中でも似たような場所が多くて特定が難しかった

 第二十四話の扉絵のモチーフのここは旧帝国図書館。上野公園の奥側、東京藝大のほど近くのこの建物は現在国会図書館に付属する国際子ども図書館として利用されています。この建物は明治三十九年竣工……つまり関東大震災による損傷を逃れています。こちらも内外装ともに威厳たっぷり。

旧前田侯爵邸

第二話より。すっごい大きい

旧前田侯爵邸

 みなさんこの玄関の形、そしてこの構図に見覚えはありませんか?そうここは末延邸のモデルとなった旧前田侯爵邸です。渋谷区駒場の東大駒場キャンパスに隣接して存在します。関東大震災後、かつてあった駒場農学校(現・東大農学部)を本郷の加賀藩上屋敷跡へ移設させる代わりにこの地を旧加賀藩主前田侯爵家と旧制一高(現・東大教養学部)、東京農業教育専門学校(筑波大農学部の前身、キャンパス現存せず)で分割した後鉄筋コンクリート造の洋館、また木造の和館がそれぞれ昭和四年、五年に竣工しました。戦前、戦中は当主前田利為の私邸として利用され、また侯爵はロンドン駐在武官であったことから民間外交にも用いられたといいます。

 しかしこの建物を巡る運命は一変します。当主利為侯が二次大戦中ボルネオ沖にて不慮の航空事故により戦没します。その後この敷地は中島飛行機などの手にわたったのち、終戦後はGHQ司令官の私邸として接収されてしまいます。昭和三十二年に接収が解除され、紆余曲折ののち昭和四十二年には都立駒場公園として一般に公開され今に至ります。(現在は目黒区が管理)

大広間

 毎週火~日曜に一般公開されている前田侯爵邸ですが、実際中に足を踏み入れてみると息を呑むような内装の質、品格に目を奪われてしまいます。公開に際して内装から調度に至るまで復元工事が行われているそうで、竣工直後の前田侯爵家が暮らしていた様子がよく伝わります。「つむつき」でもこれはよく再現されていて、(一部部屋割りなど構造には手を加えられているものの)原作で見たことのあるようなアングルから覗けばまるで紡たちがそこで生活しているような感覚です。

 

二階へ続く階段

二階の平面図

第二話より

侯爵夫妻の寝室。作中では紡の寝室になっています

 

フローリング一つとっても品格を感じます

女中室

書斎。作中では扉の位置が変更されています

和館の縁側

第二十六話より。これは池側からのアングル

 このような貴重な建築が現存し、かつ無料で公開されているなんてすごいですよね。東京を訪れる際はぜひ。隣の東大駒場キャンパスにも文化財級の建築が多く残されているほか、渋谷や下北沢にもほど近いのでそちらも。

補遺:横網町公園

 大正十二年(1922年)九月一日、午前十一時五十八分、関東一帯を未曾有の大地震が襲いました。揺れによる直接の被害もさることながら、帝都東京を灰燼に帰したのはその後巻き起こった火災でした。

 お昼前、多くの家屋が昼飯の支度をしている中での大地震は容易に火災を引き起こします。

第五話より。麹町区は概ね皇居の周りと考えればいいでしょう

 幸い貴族などの邸宅が多く立地する麹町区(現・千代田区)などは火災の被害は少なかったようですが(第三十九話で唯月以外が無事だったのがそれを物語っています)銀座の位置する京橋区日本橋、深川、本所などには木造家屋の密集する区域や耐震性の低いレンガ建築が数多存在しました。そこへ大火災が襲います。住民たちは川や空き地などへ命からがら逃げ込みますが、そのうちの一つが本所区両国、蔵前橋のほとりにある陸軍被服廠跡でした。

 しかし広大な空き地といえど猛烈な火災旋風の前には無力でした。ここではおよそ3万8千人もの方が亡くなったといわれています。

 震災後ここは都の慰霊施設として整備され横網町公園として公開されます。展示の子細についてはあえて触れません。震災の惨状ををありありと物語る実物を直接目に焼き付けここで何が起こったかを感じ取ってください。

 その後急速に復興していく東京は、おそらく作中で直接描写されることはないでしょう。しかし、ありきたりな「きらら」的表現になりますが「彼女たちの日常はこれからも続いていきます。」これから彼女たちが目にする東京の光景とは、街を襲った悲惨な光景とは裏腹に希望に満ちた復興の物語でもあります。現代に至る東京の成り立ちを理解するという側面からも、つむつきストのみなさんが東京を訪れる際は「存在しない聖地」としてこちらも頭の片隅に置いていただけると幸いです。

参考文献

ちうね「紡ぐ乙女と大正の月(1~3)」芳文社

「銀座公式ウェブサイト」(https://www.ginza.jp/history

「和光と時計塔の歴史」(https://www.wako.co.jp/clock_tower/

「歴史を訪ねて 旧前田家本邸」目黒区(https://www.city.meguro.tokyo.jp/kuminnokoe/bunkasports/rekishibunkazai/kyumaeda.html

「都立横網町公園の歴史」(https://tokyoireikyoukai.or.jp/park/history.html

 

【「つむつき」完結記念リレーエッセイ】『紡ぐ乙女と大正の月』と協賛競馬

はじめに

 

こんにちは。ののゆーです。

今回は、紡ぐ乙女と大正の月・ばんえい競馬・および個人協賛競走について端的に話させていただきます。

 

紡ぐ乙女と大正の月について

 

他の人がすでにつむつき愛にあふれた解説をしているのでいまさら説明は不要だと思いますが軽く説明します。

 

令和の女子高生が100年前の大正時代にタイムスリップして華族令嬢と女学生生活を送る漫画です。

当時「エス」と呼ばれた百合の描写と時代考証の丁寧さが魅力の作品です。

(一部時代考証によらずに作者の○癖をぶちまけている回もあったりしますが)

 

略称は、公式なものはないものの、「つむつき」が広く使われています。

 

ばんえい競馬について

 

帯広馬に重い鉄製のそり (最大1トン) をひかせ、その着順を競うレースです。

現在、馬券の発売が伴うレースは帯広市でのみ開催されています。

馬の力強さや、馬のパフォーマンスを引き出す騎手のテクニックや駆け引きが間近で見られるのが魅力です。

騎手の戦略、馬と人との深い絆や馬文化の魅力を感じられるのも、魅力のひとつです。

 

個人協賛競走について

 

このばんえい競馬ですが、なんとたった1万円でレースに名前をつけられます。

名前の付け方は、フルネームを含むものや公序良俗に反するものでなければ、

比較的自由に付けられます。

応援メッセージも付けられます。

 

つむつきと個人協賛の相性について

 

つむつき個人協賛競走の魅力は、

なんと言ってもファンと作者が一体となって競馬で盛り上がれることだと思います。

 

つむつき個人協賛競走が行われるとなると、

(作者のスケジュールや忙しさにもよるものの)

ちうね先生の動画配信がPixiv Sketchで始まります。

ファンがどんどん配信に集まって、コメント欄で作品と競馬の話について盛り上がり始めます。

当てた外したの話とか、作者の「もう競馬やめます」の話とか、

ばんえい競馬の公式解説「ばんスタ」に

「ぷりぷりプリン」が常連のように認知されていていたりしてるのを見たりすると、

いろいろ盛り上がれて楽しいです。

 

申込みの方法

 

下の参考リンクのページを参照。

公式の注意書きを一読し、Webまたは紙で申し込みしてください。

 

申込みフォーム/用紙の「レース名の由来」のところに応援メッセージを書くと、

ばんえい競馬「ばんスタ」で読み上げてくれることがあります。

(だいたい読んでくれますが、

馬場が重いときなどレースにかかる時間が長いときは読んでもらえないこともあります)

なお、応援メッセージにキャラクター名を書くときはよみがなを併記することを強く推奨します。

 

レースの1週間ほど前になると振り込みの案内が届き、振り込めば完了。

 

あとはレース当日に馬を応援したり馬券を買ったりするだけです。

 

個人協賛競走の記念品について

 

個人協賛競走の記念品として、後日騎手のサインや口取り写真・当日の競馬新聞が送られてきます。

 

終わりに

 

個人協賛競走は盛り上がれるし、作品の布教にも繋がると思うので、

私個人としてはすごくおすすめです。

 

最後に、つむつきはいいぞ!

 

参考リンク

 

協賛レース | 【公式】ばんえい十勝

https://banei-keiba.or.jp/sv_kyousan.php

【「つむつき」完結記念リレーエッセイ】『紡ぐ乙女と大正の月』クイズ大会について

 こんにちは、うりあです。

 今回は弊同好会がNF(京大の学祭)最終日、2023年11月25日に開催した『紡ぐ乙女と大正の月』クイズ大会の、作問体制、当日の様子、実際の問題などについて書かせていただきます。

 

1.大会当日までの動き

 2023年10月某日、会長の「うりあさん、「つむつき」のクイズ大会やりませんか?」という一言からすべてが始まります。元々私はクイズ、特にきらら作品についてのクイズが大好きで、NFで何かクイズ企画ができないものかと考えていました。そんな時に、私の大好きな作品である「つむつき」オンリーのクイズ大会を開催できそうだということを聞いて喜んで引き受けました(他会員の熱意がすごすぎて霞んでしまいそうですが、私も1巻発売前から熱心に追っていました)。そこから、弊同好会の中の有志で作問チームを結成して、作問してもらった問題を私が取りまとめるといった形で進めていくことになります。

 クイズ大会の形式、進行方法に関して、本大会に参加されるであろう「つむつき」ファンの方々でも、いわゆる競技クイズにはあまり慣れていない方が多いのではないか、そもそもクイズ大会に取れる時間があまりない、ということを考慮して、今回は予選:ボードクイズ15問(一律1点、誤答ペナルティなし)、決勝:早押しクイズ(一律1点、5点先取、誤答ペナルティ1問休み)という単純明快なルールで行うことにしました。

 また作問に関して、「つむつき」愛が試されるような問題にしたいという思いがあり、原作だけではなく「つむつき」に関連する幅広い事柄を出題できるように心がけました。特に、ボードクイズではある程度点数に差をつけるためにも、この思いを強く反映させて非常に難易度の高い問題も出題したつもりだったのですが……結果は後述します。逆に早押しの作問は、誰も早押しボタンを押さずにスルーになると悲しいので難易度は控えめに、ボードクイズを勝ち抜いた猛者なら最後まで問題文を聞けば答えられるだろうという想定で作問しました。基本的に私は原作しか追えていなかったので、「つむつき」界隈の活動、独自の文化みたいなものは作問チームの皆さまに色々教えてもらって良い問題ができたと感じているので、本当に感謝しかありません。

 ちなみに、作問は大会前日になってようやく形にすることができたものの、大会当日も調整するといったギリギリ具合でした。色々反省点はありますが、なんとか間に合ってよかったです……。

 

2.大会当日の様子

 当日は17名の「つむつき」ファンの皆様と、そしてなんとちうね先生も参加してくださりました!こちらとしては10人くらい集まれば御の字だと考えていたので、想定を上回る人数の方々にお越しいただいて本当にありがたかったです。また、観客の方も多くいらしてくれて、クイズ大会の時間は京大全体で一番盛り上がっていたんじゃないのかと思えるほど熱気が凄まじかったです。

クイズ大会の受付の様子

 さて、予選のボードクイズですが、こちらは全15問で、参加者全員がこちらが用意したホワイトボードに制限時間内に答えを書き込んでもらうという形式で行いました。実際に出した問題は後述しますが、択一式の問題5問と記述式の問題10問を出題しました。時間的にも、ちうね先生を含む参加者18名の解答を毎回全て私がチェックするというわけにはいかなかったので、正誤判定は基本的に作問チームのメンバーにお任せしましたが、正誤判定の基準は事前に周知してできる限り緩く取るようにお願いしたので、正誤判定者による差異みたいなものはなくすことができたのではないかと思います。基本的に皆様真剣に取り組んでくれて大きく盛り上がるということはなかったですが、パワポに何点かツッコミどころを入れておいたところ、反応してくれる人がいてくれて助かりました。これも後述しますが、参加者のレベルが高すぎて決勝進出ボーダーラインがとんでもないことになります。また、決勝進出人数(4人)よりもボーダーラインの人数の方が多かったため、決勝進出を懸けた近似値クイズも行いました。結果、ちうね先生も決勝に進出されることになります!

 そして、決勝の早押しクイズですが、全30問で、一番先に5点を先取したした人が優勝というルールで行いました。こちらはボードクイズと打って変わって教室が湧きました。早稲田式早押し機を京大アニメ研究会様にお借りして、本格的な競技クイズ大会のような形で行うことができたこともそうですし、決勝進出者の方々が「魅せる」プレイをしてくれたことが大きいと思っています。先述した通り、早押しはスルーが出ないような作問を心掛けたのですが、出題したほとんどの問題を全文読み切る前に押して正解していただけました。特に

Q. まんがタイムきららキャラット』2022年6月号で実施された「キャラットカルトクイズ」の、『紡ぐ乙女と大正の月』の答えにもなっている/

A. 「月と太陽のセレナァデ」

は本質情報が全く出ていない箇所で押しての正解で、練度の高さを思い知らされました。このような感じで進行していったので、想定より早くまさかの9問で優勝者が決定しました。このため、未出題問題はまだまだありますが、早押しの問題はここでは公開せず、今後出すであろう弊同好会の会誌に載せる予定ですので、興味がある方は是非お買い求めください!!!

ただ、優勝者が決定した時の問題(ウイニングアンサー(WA))はここで公開したいと思います。

Q. 旧姓は井上。「ねえななちゃん 私のこと好き?」と聞いて七緒のことを妹のように可愛がっていた、かつて七緒が女中として仕えていた唯月の母は誰でしょう?

A. 末延早月(早月が出れば〇)

キンキン様優勝おめでとうございます!

 

 また、クイズ大会後はちうね先生がミニ講演をしてくださりました。個人的な感想ですが、現役で連載を持っている漫画家の方が何を考えているのか、といったことを目の前でお聞きするという経験は今までになかったので非常に勉強になりました。本当にありがとうございます!

 

3.ボードクイズの問題

 早押しの問題は会誌で初めて公開する予定ですが、ボードクイズの問題はここで公開して、出題意図などを簡単に解説していくとともに、当日大会に参加できなかった「つむつき」ファンの方々が本番の問題を追体験できるようにしたいと思います。是非紙とペンを用意して実際に解いてみてください!

 

ボードクイズ全15問 制限時間:択一20秒、自由記述30秒

特に指定が無ければ、漢字でもひらがなでもどちらでも構いません。問題は基本的に難易度順に並んでいます。時制は2023年11月25日時点です。

 

 

第壱問

Q. これは誰?

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①藤川紡

②末延唯月

万里小路

④蜂須賀初野

 

第弐問

Q. 『紡ぐ乙女と大正の月』が連載されている雑誌は次の内どれ?

①「まんがタイムきらら

②「まんがタイムきららMAX

③「まんがタイムきららキャラット

④「まんがタイムきららフォワード

 

第参問

Q. 第一話で紡は令和から大正時代にタイムスリップしますが、目覚めた場所であるここはどこ?(地名を解答)

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第肆問

Q. 『紡ぐ乙女と大正の月』には男性キャラも多く登場しますが、橘公貞という人物は次のうちどれ?

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第伍問

Q. 『紡ぐ乙女と大正の月』では、史実と同じく華族制の爵位を持つ家が登場しますが、末延家の爵位と蜂須賀家の爵位を、漢字で書いてください(完答で〇)

 

第陸問

Q. 初野は紡に初めて会ったときから紡は「ただびと」ではないと見抜いていましたが、未来から来た人間ではなく何であると勘違いしているでしょう?(キーワードが出れば〇)

 

第柒問

Q. 大人気LINEスタンプ「紡ぐ乙女と大正の月 現代で使えるスタンプ」。このスタンプで唯月が言っていることになっている、大正時代の女学校では「鐘がなりました」「授業が終わりました」という意味で用いられたセリフは何?(多少の表記ゆれは〇)

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第捌問

Q. 『紡ぐ乙女と大正の月』の全イラストの中でも随一の過激な描き下ろしイラストが使用されている、『まんがタイムきららキャラット』2023年5月号の抽選プレゼントの景品となったのは、旭の何でしょう?(キーワードが出れば〇)

 

第玖問

Q. 『紡ぐ乙女と大正の月』が『まんがタイムきららキャラット』で表紙を飾った号と、そこで描かれているカップリングの組み合わせが間違っているのは次のうちどれでしょう?

①2020年9月号ー紡と唯月

②2021年11月号ー紡と初野

③2022年10月号ー紡と旭

④2023年5月号ー初野と雪佳

 

第拾問

Q. ファンによって、『紡ぐ乙女と大正の月』に関連する協賛レースが過去6回、そして明後日の2023年11月27日にも行われる予定です。これらの協賛レースはほとんどが「ばんえい競馬」(「ばんえい十勝」)で行われていますが、2023年1月17日は「高知競馬」で行われています。さて、この2023年1月17日に行われた協賛レースは何を祝って行われたでしょう?(大意が合えば〇)

 

第拾壱問

Q. 紡と唯月が両国の川開き(現在の隅田川花火大会)にデートに行った際、偶然出会った橘公貞と一緒に回ろうとした紡に対し、「女心がわからない紡さんには罰を与えないといけない」として唯月が行ったことは何でしょう?(大意が合えば〇)

 

第拾弐問

Q. この建物は作中に登場した建物の現在の姿です。何の建物でしょう?(大正時代の名称でも、現在の名称でも可。)

画像8(編集を施しています)

第拾参問

Q. 第二十八話の最後の4コマから、旭は紡に対して、それまでしなかったあることをするようになりましたが、それは何でしょう?(旭に起こった変化を解答)(大意が合えば〇)

※第二十八話のあらすじ:近い将来結婚が決まっている唯月が紡に真剣な思いを寄せても苦しむことになるだけだ、ということに気づいていないであろう鈍感な紡に対して旭は忠告しようとする。しかし旭は、紡が想像以上に唯月のことを真剣に考えていることを知り、紡のことを信頼に足る人物であると認め、改めてライバル視するようになった。

 

第拾肆問

Q. 『紡ぐ乙女と大正の月』第1巻に初めて重版がかかった際、作者であるちうね先生がTwitter(現:X)にアップしたイラストで、そこに描かれている紡は「ぷりぷりプリン~♪美味しいプリン~♪」をもじったセリフで喜んでいますが、そのセリフは何でしょう?(多少の表記ゆれは〇)

 

最終問

Q. 本大会の申し込みフォームで入力していただいた『紡ぐ乙女と大正の月』の一番好きなキャラで、一番得票数が多かったキャラは誰でしょう?(ちうね先生は除く、有効回答数17)

①藤川紡

②末延唯月

万里小路

④蜂須賀初野

 

 以上15問でした。ここから解説に入りますので、まだ答えを見たくない方は注意!!!

 それでは1問ずつ簡単に解説していきます。

 

 

第壱問

A. ①藤川紡

 常識問題(?)です。1問目は肩慣らしということで入れました。

 

第弐問

A. ③「まんがタイムきららキャラット

 この問題も雑誌講読勢にとっては即答レベルの問題なんじゃないかと思いますが、単行本勢の方々にとっては一瞬迷うのではないかと思い、ここで出題しました。

 

第参問

A. 銀座

 第一話で紡がタイムスリップ後に目を覚ましたコマです。「…ある日地震で気を失ってしまい、目覚めた時には大正十年の銀座に倒れていた女子高生・紡…」(「COMIC FUZ」の作品紹介文)のように、作品紹介文で「銀座」というワードは頻繁に出てきますし、作中でも銀座は重要な場所になっているので出題しました。が、問題文の限定が甘く若干悪問のようになってしまい、申し訳ありません。

 

第肆問

A. ②

 ①は末延道実(唯月の父)、②は橘公貞、③は旭の父、④は『少女の煌』の編集長です。

橘くんについてはこちらの記事をご覧ください。

t.co

 

第伍問

A. 末延家→公爵 蜂須賀家→侯爵

 ボードクイズということで、何か「書く」難しさが出るような問題を出したいと思い、出題しました。「侯爵」の「侯」の字の間違いが多く出ることが予想されたので、もし正解者が出なければ「候」の字でも〇にしようという話が出ていましたが、およそ半数の方が正解されたので、杞憂に終わりました。

 

第陸問

A. 天界から下界に降りてきた天女(天女が出れば〇)

画像9

 特定の登場人物のエピソード、原作ばかりから出題するのではなく、バランスよく出題することを心掛けていたので、こちらは原作からの出題になりますが、紡×初野の内容問です。この初野好き。

 

第柒問

A. 「おじゃんでございます」(多少の表記ゆれは〇「おじゃんで御座ります」「おじゃんです」など。「おじゃん」のみは×)

画像10

 「つむつき」スタンプからの出題です。Twitter(旧:X)とかを見ていると、本当にこのスタンプを使用している人をよく見かけたので、象徴的な「つむつき」ファン文化の一つとして、かつ大正時代の文化問として出題しました。

 

第捌問

A. 抱き枕カバー(抱き枕が出れば〇)

画像11

 多種多様な展開がなされている「つむつき」グッズから何か出題しようとなったとき、やはりこれしかないと思い、出題しました。実を言うと、クイズ大会の教室では「つむつき」グッズのほとんどを展示していたため、旭抱き枕カバー以外のグッズ問を出すとふと横に目をやるだけでカンニングになってしまうことも考えられたので、この問題になりました。「つむつき」グッズについてはこちらの記事をご覧ください。

t.co

 

第玖問

A. ②2021年11月号(正しくは紡と唯月)

画像12

 キャラット表紙問題です。そういえば紡×初野の表紙絵ってない……?と思い作問しました。この問題とは関係ありませんが、個人的に2023年5月号表紙のチアコス初野×雪佳が大好きです。

 

第拾問

A. 一条雪佳の誕生日を祝って行われた。(「雪佳生誕2023特別」)((一条)雪佳、誕生日の二つのワードで〇)

 「つむつき」ファン文化といえば競馬!、みたいなところがあるのと、実はこの協賛レース、我が作問チームのメンバーが開催したということもあり、出題しました。キャラの誕生日を覚えていれば日程を見れば答えられると思いますが、ここまでの問題で雪佳の問題がないことをメタ読みすれば答えることもできたかもしれません。

 

第拾壱問

A. 紡にキスをした(キス、口づけ、接吻などが出れば〇)

画像13

 満を持しての紡×唯月の内容問です。未単行本化回ですが、変化した紡と唯月の関係性を象徴したような一コマなので出題しました。美しすぎる……

 

第拾弐問

A. 資生堂ソーダファウンテン(現在の資生堂パーラー資生堂が出れば〇)

画像14

 徹底的な時代考証に基づいた作品として知られる「つむつき」ならではの、聖地今昔比較問を出そうと思い、出題しました。聖地巡礼をしたことがある方なら答えられるかと想定していましたが、予想以上に多くの方に正解していただき驚きました。ちなみに私もクイズ大会の翌月、資生堂聖地巡礼させていただきました。

 

第拾参問

A. 「藤川さん」呼びから「紡さん」呼びになった(下の名前呼びになった、ということが出れば〇)

画像15

 紡×旭の内容問です。私が個人的に名字呼びから名前呼びに変わる描写が大好きなので捩じ込んでもらいました。旭って本当にいいキャラですよね……ということで旭についてはこちらの記事をご覧ください。

t.co

t.co

第拾肆問

A. 「じゅうじゅう重版♪うれしい重版♪」(多少の表記ゆれは〇)(「じゅうじゅう重版」のみは×)

画像16

 「つむつき」を象徴するようなセリフ「ぷりぷりプリン~♪ 美味しいプリン~♪」を捩ったセリフです。まんがタイムきらら編集部がTwitter(旧:X)でハッシュタグ化していた、そして何より重版は嬉しいので出題しました。

 

第拾伍問

A. ③万里小路旭(5票)

弊同好会作成

 単なる運ゲー問???です。本当に申し訳ありません……。作問チーム内でもこの問題に関しては賛否両論だったのですが、非公式大会だし一問くらい運ゲー入れてもいいのではないか、という私の意見を通してしまいました。ただ、第壱問と選択肢を完全に同じにしているため、第壱問の答えである①紡は答えとして考えにくい、かつ唯月、旭、初野に投票した方は自分が大会エントリー時に投票したキャラを選べば正解確率は上がるはずなので、許して欲しいです……。このグラフを出したとき、ちうね先生の「紡、人気無さすぎ!」という呟きもありましたが、なかなかショッキングなグラフになってしまいました。

 

 さて、以上15問を見ていきましたが、当日の結果はなんと全問正解者(15点)が1人、14点が4人、13点が2人……と非常にハイレベルな戦いになりました。こちらとしては決勝進出ボーダーが12点くらいになるのではないかと予想していたのですが、「つむつき」ファンの皆様の「つむつき」愛、そしてちうね先生に圧倒される形になりました。

 そして、決勝に進出できるのは4人と決めていたため、14点を獲得された4名の方々には決勝進出を懸けた近似値クイズに挑戦していただきましたが、近似値クイズもここで公開したいと思います。

 

近似値クイズ(シンキングタイム30秒)(この下に解答があります!!!)

Q. 紡と唯月の真ん中バースデーはいつ?(月日のみ)

※真ん中バースデーとは…二人の誕生日の、ちょうど真ん中の日のことを指す。

例:4月1日生まれと5月1日生まれの真ん中バースデー→4月16日

1月1日生まれと2月1日生まれの真ん中バースデー→1月17日(小数点繰り上げ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A. 10月16日(紡は11月27日、唯月は9月4日)

 一問で順位がつけられる問題は何か、ということで同点者が出た場合は近似値クイズを行うことにしました。近似値クイズの題材として真ん中バースデーを選んだ理由としては、あまり「つむつき」ファンの間で真ん中バースデーという文化は浸透していないように見受けられ、真ん中バースデーまで対策してきている人はいないと考えられるが、二人の誕生日をすぐに出せる状態にしている方ならば、制限時間内にその場で正解に近い値が出せるだろうということで出題しました。ただ、西暦まで含めると計算が膨大になる、ただの西暦当てゲームになることから今回は月日のみにしました。計算方法としては9月4日から11月27日までの日数が、9月は30日まで、10月は31日までということを考慮すると84日なので、2で割った42日分を9月4日から進めると、10月16日になります。当日はズバリ10月16日を解答された方がいて、大いに教室が湧きました。

 

 ボードクイズ+αの問題・解答・解説は以上になります。若干わかりにくい問題もありますが、まだこの問題を解いていない「つむつき」ファンの方が身近にいらっしゃれば、是非出題していただけるとありがたいです。

 

4. おわりに

 非常に長くなってしまいましたが、『紡ぐ乙女と大正の月』クイズ大会が成功に終わったのは参加者の皆様、そして何よりちうね先生のおかげです!このクイズ大会を通じて、より多くの人がこれまで以上に「つむつき」の魅力を感じることができたなら非常に喜ばしく思います。

 

出典

画像1:『紡ぐ乙女と大正の月』第3巻P55

2:『紡ぐ乙女と大正の月』第1巻P10

3:『紡ぐ乙女と大正の月』第2巻P118

4:『紡ぐ乙女と大正の月』第3巻P32

5:『紡ぐ乙女と大正の月』第3巻P30

6:「まんがタイムきららキャラット」2023年5月号P8

7,10:「紡ぐ乙女と大正の月 現代で使えるスタンプ」

8:資生堂パーラー HP(2024年2月20日参照)

parlour.shiseido.co.jp

9:『紡ぐ乙女と大正の月』第1巻P43

11:「まんがタイムきららキャラット」2023年5月号P4

12:「まんがタイムきららキャラット」2021年11月号表表紙

13:「まんがタイムきららキャラット」2023年6月号P124

14:『紡ぐ乙女と大正の月』第1巻P61

15:『紡ぐ乙女と大正の月』第3巻P68

16:ちうね先生Twitter(旧:X)(2024年2月20日参照)

https://twitter.com/yachixxxxxx/status/1534823182787821568?t=ASzFUJY8JOUzSauXZbW5eQ&s=19

【「つむつき」完結記念リレーエッセイ】万里小路派爆増計画

初めまして、konーiroです。

 

私が高1の春に読み始めた作品が高校卒業と同時に完結を迎えるのは一種の「区切り」のようにも感じましたが、悲しい気持ちもあります。しかし、嘆いていても何も起こらないので、自分の推し活でも書き綴ろうと思い今回ブログに参加させて頂きました。

 

紡ぐ乙女と大正の月を初めて読んでから今に至るまでの約3年間、私は他の登場人物に目移りすることなく万里小路旭を推しています、推してきたはずです。そして、多くの人に旭を好きになってほしいと思っています。唯月や雪佳が推しだという意見ももちろん分かります。しかし、私はそこに「旭という選択肢」を付け加えることは決して浮気ではないと思います。あなたとあなたの1番の推しが知っている人を新しく推すことは言わば「セカンドパートナーを作ること」であり、ギリギリ許されるはずです。という訳で万里小路旭の魅力を2つ、お伝えします。

 

まず1つ目。デカリボン

*1

 

ロングヘアで頭に大きいリボンをつけているキャラクターは例外なく可愛いです(『うらら迷路帖』の巽紺とか…)。後頭部からはみ出るリボンはケモ耳のそれでしかなく、作品の世界観を壊すことなくオタクの心を破壊します。旭が照れ隠ししながら「にゃー」と言っているところを想像してみてください。平静を保てますか?無理でしょう。つまりそういうことなんです。

 

たった1つのリボンが、無限に出てくる我々の夢と希望を叶えてくれると言っても過言ではありません。

 

旭のヘアスタイルがショートではなくロングであることによりリボンが目立ち、旭の「キャラ」が作られていると私は考えます。しかし、それもこれも旭のスタイルと圧倒的美貌が前提であることは言うまでもありません。現代なら中学生に相当するはずなのに抱き枕カバーとして登場するほど大きいのを持ってますが、私はロングヘアと後ろからはみ出るリボンの方が魅力的に感じました。なので抱き枕カバーのビジュアルを初めて見た時は「リボンは横に添えられてるだけかぁ」などと思いました。

 

2つ目は旭の性格です。唯月の立ち振る舞いに感動し、自身の行動を反省するほど素直であるにも関わらず、紡が相手だと強気に接するうえに時々嫌味を言います。しかし彼女は天性のツンデレ属性持ちです。稀に人を褒めるところがまさにツンデレの「デレ」に当たり、旭の性格の良さが垣間見える一面だと感じます。描かれている内の体感8割が「ツン」だと思えるほど難しい性格をしている旭ですが、仲間内では紡のツッコミも担当し、場を明るい雰囲気にします。加えて、誰かがナンパされたり揉め事が起きた際に真っ先に間に割って入る強気な性格は尊敬すべきであり、旭の心の根幹にあるものの素晴らしさが伺えます。

 

*2

 

唯月を追いかけてばかりの旭ですが、しっかりとした人格者であり、それ故に紡達や読者から好かれているのではないかと思います。また、作中のターニングポイントで紡が行動を起こす際に多くの場合で旭の言動がきっかけになっています。

 

*3

 

唯月を助けるのは大抵紡の仕事ですが、その紡に手を差し伸べるのはいつも旭です。何時でも周りや紡を見ているからこそ大事な場面で的確な言葉をかけることが出来ると思いますし、それによって唯月が救われているのだからやはり旭の性格と言動は尊敬に値します。デレで世界が平和になるなんてこれ以上良いことがありますか?

 

いかがでしょうか?これはあくまでも私の癖に沿って見出された旭の魅力なので、人によっては刺さらなかったかもしれません。また、「いやいやお前それだけしかないんか?○○も良いやろ」など、他の魅力を感じている方もいるはずです。それはそれでSNSで書き綴って貰えれば私も共有したいと思っています。「万里小路派爆増計画」などと題して語っていますが、実は意外と旭推しは世に溢れていると思っていたりいなかったり…因みに、京大の11月祭にて行われた「つむつき」クイズ大会での参加者事前アンケートでは旭が「推しキャラランキング」一位でした。嬉しかった……

 

 

ところで、旭の誕生日にも「旭らしさ」があることを知っていますか?旭の誕生日は3月17日です。3月17日の誕生花はアンスリウムサンシュユなどがあり、花言葉はそれぞれ「恋にもだえる心」と「気丈な愛」です。まさに万里小路旭を表していると思いませんか?余談ですが、つむつきは花に関連した小ネタが多いと思っています。特に誕生花はとても面白いので、是非調べて見てください。ちうね先生は意識して誕生日を決めてらっしゃったりしたんですかね?

 

話を戻しますが、旭の魅力は伝わったでしょうか?話を深読みするとより旭の可愛さ健気さが見えてくるはずです。残念ながら話は結末を迎えてしまいますが、だからと言ってキャラクターが我々の記憶から消えてしまう訳ではありません。このブログを機につむつきを読み直し、旭の推してくれるのであれば1人のつむつきストとして幸せです。

*1:ちうね先生の公式Xより

*2:『紡ぐ乙女と大正の月』1巻 p.64

*3:『紡ぐ乙女と大正の月』2巻 p.105

【「つむつき」完結記念リレーエッセイ】「友人キャラ」「負けヒロイン」という視点から見る万里小路旭~4年ぶりに一気読みしてみた感想文~

書いた人:湖柳小凪

 

 良い恋愛ジャンルの作品、とりわけ女の子同士の恋愛を描いた作品にはしばしば「素晴らしい友人キャラ」が登場する――。

 

 これは数年前から私が掲げている持論です。ここで私が使っている友人キャラという言葉は単なる主人公の「友達」・単なる「脇役」ではありません。想い人との関係に悩む主人公の良き相談相手で、時には叱咤激励して物語を前に進めてくれる。注目されることは少ないけれどもこのキャラがいなければ物語がそこで終わってしまう。友人キャラは言ってしまえば、ラブコメの影の立役者なのです。

 そして今回、ブログの執筆に際して「つむつき」を通読してみたのですが、この作品もまた、とある「友人キャラ」に支えられてここまでやってきたのではないか、という仮説に思い至りました。その友人キャラの名前は万里小路旭。

 もちろん彼女は言うまでもなく主人公・紡のライバルとして登場したキャラクターで当初は「友人キャラ」になるなんて思ってもみませんでした。そんな彼女のことをなぜ私が「友人キャラ」と感じるようになったのか。今回は「つむつき」全編を通した旭の足跡を辿る中でその理由についてお話していきます。

 

○初登場から百合を「属性」として有していた女の子・万里小路

 思えば旭はその登場とともに「女の子同士の特別な関係」「女の子が女の子へ向ける恋慕」というものを本格的に本作に持ち込んだ人物でした。彼女が登場する直前の2話でも最後のコマで

唯月:「不束者って……まるで結婚するみたいね」

という台詞があるなど、女の子同士の恋愛を仄めかすような科白や描写はあります。

 しかし、旭の場合は当初から「唯月さんを想ってる」ことを明言しており、唯月を狙おうとする他の女子や男子を明らかに敵視するなどといった様子が描かれました。終盤では主人公二人が恋愛関係まで発展するこの作品に「女の子が女の子を好きになる」という百合的要素を本格的に本作に持ち込んだのは彼女なのです。

 

旭の立ち位置が分かりやすくなるかな、と思って相関図を作成してみた。単行本1巻冒頭のカラーページより画像は引用。

 そんな彼女に対する私の第一印象は漫画やラノベによくいる「女の子が好きな女の子キャラ」でした。『とある科学の超電磁砲』の白井黒子や『這い寄れ! ニャル子さん』のクー子など、別に女の子同士の恋愛をテーマとして描かない作品でもレギュラーメンバーの一人に「女の子が好きな女の子」が登場する作品は多くあります。そのような中で旭も、非百合作品に登場する「女の子が好きな女の子」なのかな、と最初は思ってしまったのです。

 そう感じた主要因は、旭の唯月に対する思いはシリアスな物語、というよりも日常回で、ある種コメディタッチに描かれることが多いからだと思います。旭の思いは一方通行で唯月は全く意識していなく、大量に手紙を出したり(5話)一方的に間接キスを意識して鼻血を出したり(6話)、ギャグっぽく演出することが多くありました。なので旭は紡と唯月を奪い合うライバルポジションキャラでありながらも2巻の雪佳のようにドロドロの三角関係を繰り広げるのではなく、シリアスな物語の中でも読者がほっと息をつける、日常パートの最後の砦的なキャラクターでもあったのです。

 

 

○紡が唯月とは違う意味で「一番気を許していた相手」として見る旭

 もう少し日常パートでの旭というキャラクター、そして紡との関係性についてみていきましょう。

 3巻の表紙でも旭が紡の頬をいじっているように、意外と、もっと言うと付き合う前の唯月と紡以上にじゃれつきあっているシーンが多く、単行本3巻までで旭が紡の頬をいじっているシーンは12コマないし13コマもあります(小凪調べ)。これほどまでじゃれつきあえるのは2人の信頼関係の表れの一つとも捉えられるのではないでしょうか。

ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』第3巻(2023年,芳文社)

 また、逆に紡から旭に対しても旭に対してはやたら心を許してるな、と感じるシーンが幾つも見られます。例えば紡・唯・旭・初野の4人で資生堂の喫茶店に行った際にちゃっかりたかったり、元日の式典後にキラキラしたものを戻してしまった紡の犠牲者になってしまったのが旭だったり。

ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』3巻(2022年,芳文社)p.49

 これは旭がギャグにも使いやすい要員というのもあるとは思いますが、恩人で、家族で、主人で、恋人である唯月とはまた違った、「一番気の許せる友達」としての信頼関係がある相手だからこそすんなり受けられるシーンだと思うのです。

 この紡と旭の微妙な距離感の近さ・関係性は、違う意味の「好き」同士かもしれないけれど同じ人を想っているのは変わらない、というところに起因しているのだと思います。そしてそんな唯月とはまた違った意味で紡が気を許せ、そして紡のことを唯月と同じくらいに正当に評価しているからこそ、次に挙げるシーンでの旭の後押しに説得力が増し、かっこよく見えるのでしょう。

 

○旭に最も「友人キャラ」を感じた瞬間

 そして旭というキャラが真に光るのはシリアスなストーリーパートで心の折れかかった紡の背中を押すシーンにあります。そのようなシーンはこれまでに二度ありました。一度目は第10話、そしてもう一つは第40話。

 

 まず第10話から簡単に見ていきましょう。この回では唯月のお父さんが屋敷に戻ってきて、唯月に悪い影響を与えたとして紡は末延家の女中をクビになって追い出されてしまいます。失意のまま彷徨う紡の前に現れたのは旭でした。旭はもともと唯月から紡を助けてあげてほしいと電話を受けて紡を探していたのですが、唯月を退学から救えるのは大正時代の常識に染まり切っていない「非常識」で唯月のことを変えてきた紡しかいないと叱咤激励し、紡のことを送り出します。

 このシーンは旭自身も直後に「敵に塩を送る」と評しているものの、旭が紡のことを適切に評価していて、1巻のクライマックスで紡と唯月がハッピーエンドを迎えるためにはこのシーンの旭抜きでは不可能だったでしょう。

ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』1巻(2020年,芳文社)p.105

 

 そしてもう一度旭が紡の背中を押すのは最終話1話前の40話。このシーンは全体的に1巻ハイライトの第10話と重ね合わせて描写されているエピソードになりますが、紡が唯月を探しやすくするために着物まで貸して大切な想い人である唯月を紡に「頼みましたわよ」と言って送り出すシーンです。一見第10話とそんなに大差がないように見えるこの場面。しかし、物語最終版、これまで唯月を想うライバルとして、そして(旭自身にはそのつもりはなかったでしょうが)「友人キャラ」としてこれまで関わってきた紡と旭の総決算ともいえるこのシーンの送り出しは、10話とは込められている意味が段違いです。

ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』第40話(2024年,芳文社)

 第10話・11話での唯月とお父さんの関係、2巻での唯月と雪佳の関係、二人だけのクリスマス、そして最終的には付き合うまでに至った紡に旭は自分の負けを認めざるを得なかったのでしょう。そして恋のライバルだからこそ(本人たち以外は)誰よりも唯月を救う紡をしっかりと見てきて、紡を信頼していたからこそ、最愛の人を今回も「救って」くれると信じて、唯月を託した。

 旭と紡の間の関係性の名前は本当は『友達』というよりも『ライバル』と表現した方が適切なのでしょう。しかし、それだけ信頼して、負けを認めて主人公が想い人に会いに行く最大限のサポートをして背中を押す、これは旭にしかできないことで、こんな旭がいたからこそ、「つむつき」のストーリーは成り立ったのではないでしょうか。

 地味に着物をあげたわけじゃなく貸しただけ、と強調したところは旭はツンデレな所があるので明言はしないものの、「紡も死んだりまたどこかに消えたりせずに、ちゃんと帰ってきなさい」という意味が込められていて心に染みるものがあります。

 

 

○最初から負けヒロインが運命づけられていたキャラ

 と、ここまで旭の友人キャラとしての活躍や日常シーンでの紡との交友についてみてきましたが、旭とてすぐに紡に対する敗北を受け入れていたわけではありません。

 つむつきファンなら誰でも知っているであろう「ぷりぷりプリン」の名言が登場した第27話・そして続く第28話は、これまで一方的に唯月に意識されていない、あくまでコメディタッチに描かれてきた旭の唯月に対する恋慕を抱くようになったきっかけと、最大のライバルである紡との真正面からの対話が描かれた屈指の名シーンです。

 そこで紡は却って「最後まで唯月に手を差し伸べ続ける」、どうしようもなくなったら唯月を「苦しみのない未来に連れていく」と決意を新たにし、返って紡の背中を推してることにはなるのですが、そこで旭は明確に「でも私は負けませんから」と明言しています。

ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』3巻(2022年,芳文社)p.68

 ただ、最初から唯月に対する片思いがコメディタッチに描かれていたという部分以外でも、また紡と唯「月」がタイトルになっているというメタ的な部分を考慮しなくても、残念ながら旭は最初から負けヒロインでした。

 (これは先日の橘公貞君の記事でも指摘がありましたが)、華族令嬢として大正時代に生まれ、華族令嬢・女としての役割に反感を抱きながらも旭は、その時代の価値観の中で育ち、卒業したら唯月も旭も、華族の子息と結婚しなくてはいけないことを「仕方がないこと」と諦めてしまっていたのです。そのスタート地点からして未来人の紡と旭では大きな隔たりがありました。そしてそんな「非常識な」紡は旭の至れなかった先の世界へと唯月の手を引くことができてしまったのです。

 そんな一途に唯月を想いながらも最後まで報われなかった負けヒロイン・万里小路旭。報われないとしてもその一途な思いの強さで日常パートでは私達読者を和ませ、シリアスなストーリーパートでは最愛の人の幸せを一番に考えてここぞという時で信頼している友人(ライバル)の背中を押してきた万里小路旭。

 そんな本作最大の負けヒロイン兼最強の友人キャラの彼女がいたからこそ、日常パートと時代背景に基づいたシリアスなストーリーの絶妙なバランスの取れた「つむつき」という作品が成立し得たのではないでしょうか。

 

 

○おまけ__『旭』という名前

 と、ここまでも好き勝手に私の独自解釈を書かせていただきましたが最後の最後にもう一言だけ私の妄想を語らせてください。

 ここまで見てきて、「旭」という太陽を連想させる名前自体にも、旭が本作において紡と唯月の関係を照らし、遠くから見守る友人キャラ・負けヒロインという意図が最初から込められていたのではないか、と私は思うのです。月は太陽に照らされなければ輝けない。しかし、太陽と月は決して交わることがないどころか、地球と月の距離に比べて遥かに遠い。そんな太陽である旭は名前からして紡と唯月の百合物語を一歩引いたところから美しいものとして照らし出し、見守る存在だった。百合を遠くから見守り、壁となって応援する存在のように。

 そこまで読み込むとあまりにも旭がかわいそうになってきますが、それはそれで好きなものや自分の信じる者に対してまっすぐな、美しすぎる旭の生き様に合っているようにもまた思えてしまうのです。

 

 

○エンディング

 以上、「つむつき」という物語の影の立役者たる万里小路旭について語らせていただきました。今回取り上げなかった第2巻などにも旭には面白いシーン、かっこよすぎるシーンとか多々あるのですが、冗長になりすぎるのも問題なのでこれくらいにしておきます。

 旭の活躍は第40話が最後かな? とも思いますが、最終話にも美味しい出番があることを1ファンとして祈って今回は筆をおきたいと思います。

 最終話、楽しみにしてます!

【「つむつき」完結記念リレーエッセイ】きらら男性キャラかっこよさTierS:橘公貞くん

言うまでもなく、全てのきらら読者は作中の男性キャラを愛している。

(書いた人:ミッ)

きらら作品には魅力的な男性キャラクターがたくさんいる。

きらら好きの人間ならば皆、『ごちうさ』のタカヒロさんに人生相談をしたいと思っているし、『アニマエール!』の猿渡暁音くんをかわいいなあと思っているし、『ブレンド・S』での秋夏帆にドギマギし、きらファンにほとんどの男性キャラが正式に参戦しないことに異議を唱えた(特に『夢喰いメリー』の夢路)。

今日は、きらら作品の魅力的な男性キャラを求めて今日も荒野を彷徨う皆様に、『紡ぐ乙女と大正の月』に登場するある御仁を紹介するためにこのリレーブログを執筆した。

 

『橘家のご次男 公貞くんだ』

✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨

(ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』(2022年,芳文社)3巻,32p)

 

橘公貞くんがまともに登場したのは1921年クリスマス回、両国の川開き回、1922年クリスマス回くらいしかないのだが、非常に大きな存在感と魅力を隠し切ることができず、初登場回直後に開かれた原作ちうね先生のサイン会では彼のイラストを頼んだ読者が現れたほどだ。それが私だ。


きらら展名古屋のサイン会にて、ちうね先生に橘公貞くんのイラストを書いていただいた。

担当編集の方と一緒に大層驚かれていた。

 

今回は『紡ぐ乙女と大正の月』の読者や、きらら作品に登場する男性キャラを愛してやまない全てのきらら読者に向けて橘公貞くんを紹介し、その魅力に気づいていただく。

 

彼の魅力について

○かっこいい

鼻息荒く、肩をいからせて唯月をダンスに誘う他のキャラクターとの描き分けは残酷なほど。表情や立ち振る舞いには余裕があってスマート、ダンス時の姿勢もよく、フォーマルな燕尾服が似合い、紡は『こんなイケメン初めてみた…!芸能人みたい…』と評した。

このイラストにカラーがついたら拡大コピーして額縁に入れて飾るが...

(ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』(2022年,芳文社)3巻,33p)

 

○相手の気分を察することができる

彼はいかなる時でも余裕を持っているため、ダンス中に相手を観察し、唯月の笑顔の奥に隠された憂いを察することができ、適切な程度の声かけをすることができる。

デリカシーの塊。

(ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』(2022年,芳文社)3巻,33p)

 

○褒め上手

表情を崩さず、柔和な笑顔を保ったまま相手をたくさん、自然な流れで褒めることができる。『とても美しいお方だ』『流石お上手ですね』などの基本的な褒め言葉はもちろんだが、私は『美女は憂い顔も絵になるというが貴女は笑顔のほうがもっと素敵だ』という完璧なフレーズがスラスラと出てくることに感動した。なんなんだこの男は…

 

○正しい行いをすることができる

紡と唯月を狙った痴漢を撃退し、それだけでなく彼女たちを守る役割を申し出さえした。また、無礼な口をきいてしまった紡に対しても『いえいえそんな大層な人間ではないですよ』と謙遜した。ただの爽やかなイケメン描写として流してしまいがちだが時代背景を踏まえて考えると中身の美しさがより感じられる。旭風にいうと、「外見だけでなく内面も令息にふさわしい人」である。

 

○理解があり、婚約者相手でもプライバシーに配慮できる

紡と唯月のキスを覗いてしまった公貞は全てを理解し、配慮パワーに満ちた以下の行動をとった。

・唯月にとって不特定多数の男性とのダンスが負担であることを察知し、婚約者の立場を活かして彼女を連れ出した。

・唯月の、結婚に関する認識を聞き出した。その際繋いだ手を一旦離した。

・キスを覗いてしまったことを謝った。プライバシー尊重意識の証左である。

大正当時は、同性間の特別な愛情は一過性のものである、またはそうあるべきと捉えられがちだったが、公貞はそのようなスティグマに染まらず、結婚すること、男性と一緒になることが唯月にもたらす精神的な負荷を案じることができた。強固で徹底した人道尊重の意識がなければ不可能なものである(公貞から唯月への恋愛感情がない場合に限る。それは作中から明示的に読み取ることはできない)。このような人間に私もなりたい。

唯月を連れ出すシーン。スチルでしょ

(まんがタイムきららキャラット2023年11月号(2023年,芳文社)76p)

 

旭は唯月を「外見だけでなく内面も令嬢にふさわしい人」と評し惹かれるようになったが、もうそれと同じくらい最高の傑物である。スパダリがすぎる。逆につまらない。乙女ゲームには登場しないタイプだ。

 

…とここまで語ったが、私が彼に惹かれたのは上記のキャラ萌えチックな理由だけではない。彼に惹かれた理由を説明するには『紡ぐ乙女と大正の月』の話の展開を時系列的にふまえ、その中で彼が私にどう映ったかを説明する必要がある。

 

 

彼の作中での位置付け

『紡ぐ乙女と大正の月』の大きなクエスチョンの一つとして、「紡と唯月の関係が永続的なものか」というものがある。作中にも示されているように、エスの親密な関係は学生時代のみのもので、卒業や結婚でいずれ別れが来てしまう。

例えば、エス文化を描いた『乙女の港』においても、恋愛感情の描写は博愛精神の成長物語に”昇華”され、永続的な同性の1対1の関係は描かれない。

このように、その時代においても、作中世界においても一過性のものとして認識されていたエスだが、「人生を投げ捨てかねないくらい藤川さんを想っている」唯月、「大切な人が辛い思いをしているなら最後まで手を差し伸べる」「私は絶対にどこにも行かない」と誓う紡の関係は、この認識とは少し異質なものとなっている。

 

この紡と唯月の関係の永続性志向は、公貞が初登場した1921年クリスマス回時点では、唯月がそう願っていることを匂わせる描写はあったものの、明確に示されてはいなかった。それもあり、1921年クリスマス回は「紡と唯月の関係は永遠に続くのか」という不安定なクエスチョンの目の前に、

・家の問題/社会の目をどうするか

・生まれた時代が違うことをどうするか

などの問題/葛藤を改めて突きつけるものとなり、関係の永続性は絶望的に感じらた。

 

そんな絶望を与える回に、橘公貞が登場した。彼は上で述べたようにクリスマスの夜会のみで素晴らしい人物であることがわかり、2人の暗い未来しか想像できない私にとっての希望となった。彼ならば唯月の望みに理解を示し、自由を尊重してくれるに違いない、と思ったのだ。(あまりに辛すぎて彼に希望を抱かなければやっていられなかった、みたいなところはある。)

救世主のご尊顔
(ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』(2022年,芳文社)3巻,32p)

紡の約束、唯月の告白などがあり、2人の永続性志向が明らかになった後も、公貞は私の中で輝き続けていた。彼ならば2人を応援してくれるはずだ、と。彼に惚れていた私は両国の川開き回の最後のコマでも不安になったりしなかったし、むしろ「理解者が増えた!」と喜んだ。

彼が信頼に足る人物であるという前提のもと見ると、安心感しかないシーン

(まんがタイムきららキャラット2023年6月号(2023年,芳文社)124p)

 

このように、私にとって橘公貞は、

「紡と唯月の関係が続いても続かなくても、未来が暗いものになってしまう」という、マイナス対マイナスの葛藤の状況

に現れた、

「紡と唯月の関係が続いても続かなくても、未来をより良いものに導いてくれる人物」

であった。

最終話での彼の立ち回りにも期待している。

 

最後に

以上、橘公貞くんのかっこいい点を列挙したのち、彼が救世主だと感じられた理由を説明した。

この記事を読んで、これまで橘公貞くんの描写を「ああ、例のイケメン当て馬ね」と流していた人は今一度彼の挙動を確かめ、悔い改めてほしい。

 

......というのは3割くらい冗談だ。"非常識"な紡との対比を楽しんでみるのも良いと思う。